その日は、朝からしとしとと雨の音が響いていた。
私は事務所の窓を打つ雨の音を聞きながら、目の前の女性を眺めていた。
彼女の指は震え、膝の上で固く握りしめられている。
「……殺したいほど、憎いんです」
震えるその声には、裏切られた絶望と、燃え盛るような復讐心が宿っていた。
私は彼女の目を真っ直ぐに見つめ、こう返した。
「わかりました。
では、相手が一生後悔する『最高の復讐』を致しましょう。
ただし、それはあなたが考えているような工作ではありません。」
これが、私が数多の地獄を見てきた末に辿り着いた、真の解決策である。
今の苦痛を終わらすために。
彼女が求めていたのは、
・相手の社会的地位を奪う
・家庭を崩壊させる
・別れさせる
などの具体的な『特殊工作』と呼ばれるものだ。
私も一応この道のプロであり、依頼を完遂する技術も、ノウハウもある。
ただ、私の思う『最高の復讐』とはそれらではない。
なので、私は彼女にこう問いかけた。
「もし、私が相手を地獄へ突き落としたとして、その瞬間、あなたは満足するかもしれません。
ですがその翌朝、鏡に映るあなたの顔はどうなっていると思いますか?
相手を忘れて幸せな人生を送れていますか?
相手を壊しても、奪われたあなたの輝きは戻ってこない。
それどころか、あなたの心は一生、相手に縛り付けられたままになる」
私は声を落とし続けた。
「もし、それでもやりたいと言うなら、お付き合い致しましょう。
ただ、本当の復讐とは、相手をボロボロにすることではなく、
あなた自身が圧倒的に幸せになる事です。
そして相手が『あんなに自分に執着していたあなたが、自分の事など目もくれず、別人のように輝き、手の届かない存在になったのを見たとき』です。
それが、私が提案する『最高の復讐プラン』です。」
私が話し終わると、部屋に再び雨音だけが戻ってきた。
彼女は微動だにせず、ただテーブルの一点を見つめている。
そして間を置き、かすれた声でこう言った。
「……そんなことが、私にできるんでしょうか?」
相手に報復する方法ばかりを考えていた脳内に、自分が笑っている未来という、思いもよらなかった選択肢が投げ込まれ、初めて「迷い」という名の光が差した。
彼女はゆっくりと顔を上げ、私の目を真っ直ぐ見てこう言った。
「私が圧倒的に幸せになる…..。
それが、私にできる一番残酷な仕返しだと言うんですね」
私は深くうなずいた。
「……そのプラン、詳しく聞かせてください」
彼女の顔が復讐を誓った者の顔でありながら、どこか希望を掴もうとする者の顔に変わっていた。
私は、手元の資料を閉じ、新しい真っ白な紙を広げた。
「はい。では、戦いの準備を始めましょう。」
最後に
憎しみ、絶望、そして裏切り。
もしあなたが今、かつての彼女と同じように、暗闇の中で立ち止まっているのなら。
相手を壊すことに全エネルギーを注ごうとしているのなら。
一度だけ、私のところへ相談に来てください。
あなたが望むなら、どんな制裁の手伝いもしましょう。
でも、もしあなたが「本当の勝利」を掴みたいと願うなら、 私はあなたが圧倒的に輝くための戦略を練ります。
あなたの人生は、あんな奴に壊されていいものではないはずです。


